オニヤドカリは美味しいのか?食べた後の水は甘いのか?

オニヤドカリ,ヤドカリ


ヤドカリって美味しいのかな?

磯の潮溜まりでうごめくヤドカリたちを見て、そんな気持ちをいだくのは私だけではないはず。

「でも、ヤドカリは小さすぎて味わうの無理だよね?」

いやいや、世の中にはデカいヤドカリがいるんですよ。

オニヤドカリ
オニヤドカリ

例えばオニヤドカリとか、ヤシガニとかとか。

ヤシガニは沖縄に行っても食べられるかどうかわかりませんが、オニヤドカリは関東近隣にも生息しています。

そう食べられる巨大ヤドカリは身近にいる…!

オニヤドカリ

それも珍しい成分が含まれていて「食べた後に水を飲むと甘く感じる」らしく、「アマガニ」なんて呼ばれているそう。身近なわりに味を知らない生物ヤドカリ。めっちゃ気になりませんか?

というわけで、今回はそんな巨大ヤドカリことオニヤドカリの味見レポートです。

房総半島の海は危険がいっぱい!

夏、涼しい夜を狙って、房総半島のとある堤防にやってきました。

オニヤドカリをとる

釣りでもしようかなと、貝を餌に釣り針をたれてみましたのですが…

釣れたのは、フグ(アカメフグかな?)とか、

アカメフグ
アカメフグ(有毒)

大きめのゴンズイとか。(刺されたことあるんですが、一週間は痛いです!そっこー毒針をハサミで落としました)

ゴンズイ
ゴンズイ(ヒレに毒針があるので要注意)

ハリセンボンの仲間とか、なんか危険めのばっかり。なんなのこの海?

イシガキフグ
イシガキフグ(毒はないけどトゲだらけなので要注意)

極めつけは、ライトを照らしていた海が、電気クラゲだらけに!

めっちゃ痛い毒クラゲですよこれ!

水面のクラゲの大群
電気クラゲこと、アンドンクラゲ。刺されて痛いクラゲの定番

落ちたらショック死しちゃうんじゃ…?なんだこの海、危険すぎでは?

危険な海にレアな食材が

「エサなくなったし、危ないし、そろそろ帰ろうか~~」などというてたら、一緒に釣りにきてたアリサさんが…

「良いものがいた!」

…と網を片手に岸壁を覗き込みはじめました。

こわくないの!?した電気クラゲだらけですよ!?

オニヤドカリをとるアリサさん

ざぶん!と網を入れてすくったのは…

サザエ…?

いや違うな、中になんかいますね。

オニヤドカリをとる
あぁ~サザエはとっちゃだめだけどこいつはOK

これはあれだ!

とって食べてみたかったやつで、巨大ヤドカリ。

オニヤドカリってやつですね。

オニヤドカリをとる
巨大ヤドカリ。地面においたら歩き出します。サザエ重くないのかな?

こいつが居るなら話は別!

私もついつい身を乗り出して探しちゃったりして…

電気クラゲの恐ろしさなんぞより食い気な、とって食べる生活の二人は5匹のヤドカリをゲット。ほくほく。

オニヤドカリを殻から追い出すやりかた

さて、とってきた獲物はこんなかんじ、どれも一筋縄ではいかない食材ばかりですネ。

特にオニヤドカリ。食べるためにはカラから出さなければならないわけですが、ゴツいの背負ってて、カナヅチとかでも大変そう。

収穫物

無理やりひっぱる?

ノミとカナヅチで叩き割る?

うーん…

などと言うてたら、アリサさんが「ネットで調べたら、良い方法書いてた!」と言って取り出したのはチャッカマン。

オニヤドカリをあぶる

これでヤドカリを炙る。すると熱くなってでてくるらしい…

ちりちりちり…

チャッカマンで殻の先端を炙ること数十秒、

オニヤドカリをさばく

モゾモゾっとでてきました。

お外怖いのより、おしり熱いのが勝ったらしい。

文字通り尻に火がついた、ってところですか。うん、なんかごめん。

オニヤドカリ

半身がでたら、つかんでズズズズと引きずり出します。

すっぽーん!

すっぽんぽんヤドカリ。カラの中身ってこんなんなってんですね…!

オニヤドカリ
オニヤドカリの中身、トマトみたいに赤い。

全部取り出しました。

第一印象は毛深いな、と。多脚とあいまってタランチュラみたい。

オニヤドカリ
すっぽんぽんオニヤドカリたち

“おしりのふくらみ"が、よりいっそうカニというよりもクモを連想させます。

味を思い出しちゃいますね…。クモはクリーミーですが、果たしてヤドカリはどうなのか?

オニヤドカリを料理する

ヤドカリをさばいてみます。さすがに初体験。

オニヤドカリをさばく

すっぽんぽんだと、エビのような、カニのような、クモのような…?どうさばけばいいんです?

えいっ!ままよ。

ばっさー。

オニヤドカリをさばく

こうやれば上半身はカニ。おしりは…クモかエビか?いや明太子か。

明太子ぶぶんにハサミをいれ、中身を出します。

オニヤドカリをさばく

皮が思ったよりしっかりしてる。

メリメリッ…

と引き裂くと、なんか色々でてきました。

オニヤドカリをさばく
オニヤドカリの肝臓

オレンジなのは肝臓?

そして身、貝殻の中でふんばってる筋肉。さすがに蜘蛛糸はでてきませんでした(そりゃあそう)

オニヤドカリをさばく
オニヤドカリの腹の中

長いのはきっと腸管か消化管でしょう。フンはどうしてるんでしょうね。カラの中にするのかな?嫌じゃない?

(調べたら、カラの中でして、足でかきだすんだそーです。器用!)

オニヤドカリをさばく
オニヤドカリの消化管、筋肉、肝臓

これが主な可食部の身。ちょっとだけ。まぁカラの中では筋肉を使わないでしょうしね~

なんなら肝臓のほうが大きいのでは?

オニヤドカリの身
オニヤドカリの身

個体によって内臓の色が違い、肝臓に赤いラインが入っている個体もいました。

違いがさっぱりわからない、教えてヤドカリ博士…!

オニヤドカリをさばく

頭のほうは味噌汁にします。

エビやカニのダシってうまいですし、良いダシがでるでしょうきっと。

オニヤドカリの料理

五匹分の頭を入れ、ひと煮立ちさせたら味噌をとくだけ。シンプルなヤドカリ味の味噌汁ができました。

オニヤドカリの料理

というわけでばばーん!完成。

オニヤドカリの刺し身と味噌汁!

五匹さばいてこんだけ、さすがにちょびっとですね!

オニヤドカリ定食

めちゃめちゃ貴重な気がしてきました。さっそくいただいてみましょう!

オニヤドカリの味は?水は甘くなるのか?

オニヤドカリの刺身を食べる

まずは刺し身から食べてみましょうか。

オニヤドカリの刺し身
オニヤドカリの刺し身

初めてオニヤドカリの存在を知ったのは某DPZ的なサイト。

「オニヤドカリを食べると水が甘くなる」なんて記事でした。食べた後の水が甘くなる?って話でしたねそういえば。

甘くなるのかどうかも気にはなりますが、私は単純に刺し身の味を知りたいのである。エビカニとは違うのか?

いただきます!!

オニヤドカリの刺し身を食べる

もぐ…

ふむふむ…

ぷるぷるですね。エビでもカニでもましてやクモでもない。良い言い方をすると上品な味、だめな言い方すると水っぽくってあっさり。

高級料亭で2,3枚だされて「ヤドカリです。」って言われたら「オオッ!これはこれは!」って感激するでしょうが、

オニヤドカリの刺し身
オニヤドカリの刺し身。やや褐色なのです

頑張ってカラから追い出してこれだけだと、うーん!!

まぁ鍛えてない部位ですもんねえ…こんなもんかー!いい経験をさせていただいたー!

そんなカンジの味。

ヤドカリの肝で水は甘くなるのか?

続いて、例の「水が甘くなる現象」を試してみることに、

オニヤドカリと水

アリサさんがいうには、肝臓を食べると水が甘くなるらしい。

甲殻類の肝臓って食べて平気なんだっけ?とは思うものの、少量ですし大事には至らないでしょう。

なにしろ、身よりでかくて、食べないのはもったいない!

オニヤドカリの肝
オニヤドカリの肝

いただきます!!

はむ…むぐむぐ…

オニヤドカリの刺し身

味はこってりした肝味。カニミソみたいな甲殻類の濃厚さはなくて、魚の肝に近いかな?

ここに水を飲むと甘い…のか?

ぐび。

オニヤドカリのあとのみず

んー!!!

肝の生臭さが洗い流されて…

ほんのり甘い…かも??

醤油を"九州の甘い醤油"にしたのがやや失敗だったかもしれません。分かりづらい。

とはいえ、ニ度三度水を口に運んでも、それでもなおほんのり甘い…!(ような気がします)

オニヤドカリのあとのみず

なんとなく、舌の上に肝の成分が張り付いていて、それが水で流れなくて甘い(ような気がする)

後味が甘い。のでしょうか?

めっちゃ甘い!のではなくって、ちょっぴり残念ですが、ちゃんと甘い(ような気がするんです!)

オニヤドカリの味噌汁の味

最後に味噌汁でシメましょう。

オニヤドカリの味噌汁

ずずず…

ん。さっぱり系だ。

味噌汁が甘くなっていたりもしませんし、なんなら濃厚な味を期待していただけにちょっぴり肩透かし。

オニヤドカリ

身も食べるほどはなくて、チューチュー吸うくらい。強いて言えば手が割って食べられるかな?くらい。

とはいえ貴重な経験をさせていただきました。ありがとうヤドカリ!

ごちそうさまでした。

まとめ

オニヤドカリを夜の堤防ですくって、お刺身で食べてみました。味はよくいって上品。おまけで「オニヤドカリを食べた後に水を飲むと甘い」という話の検証をしてみましたが、明確な差は感じられず、なんとなく甘いような?という感じでした

あとあと調べてみたところ、ヤドカリ由来の甘味誘導成分の同定という論文がヒット。甘味成分はオクテニル硫酸エステルという名で、きちんと含まれているとのこと。甘みを表す成分でありつつ、他の甘味を阻害する効能もあるらしい。それで“九州醤油の甘みを打ち消して"分かりづらくなったの…かも?

うーん。ひとつ言えることは、ヤドカリの甘み実験をする方は、どうぞ“関東のしょっぱい醤油"で実験をしていただければ幸いでございます。かしこ。

ホンドオニヤドカリ

【採取場所】磯、岸壁
【採取時期】通年
ヤドカリ科オニヤドカリ属。本州に生息する大型のヤドカリ。真っ赤なデカめのヤドカリで、背負う貝もサザエなど中型の貝殻。磯や漁港などの岩にはりついている。食べた後に水が甘く感じられるという話から「アマガニ」とも呼ばれる。

参考にさせていただいた資料:Wikipedia

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【おまけ料理レシピ】オニヤドカリの肝醤油

【材料】
オニヤドカリ
醤油 ※糖分の入っていないもの

【作り方】
1.
オニヤドカリは炙って取り出すか、ノミとハンマーで割って取り出す。

2.
尻尾を使う。頭は味噌汁かすまし汁にでもする。
尻尾はハサミで開き、肝と身を取り出しておく。

3.
肝を醤油によく溶かす。

4.
身を肝につけていただく。

5.
すかさず水をいただくと、甘い…ような気がする。
焼酎とかも甘く感じるのだろうか?(要検証)