猟師になりたい!① まずは狩猟とは何なのかを知ろう

2023年9月13日狩猟


猟師になりたい!
という狩猟をはじめたい方に読んでいただきたい、コーナー第一回。

第一回はさてまずいきなり余談っぽいのですが「狩猟とはどういうものなのか?」という事についてお話しさせ下さい。

狩猟とは?

狩猟

山野の鳥獣を銃・網・わななどを使って捕らえること (goo国語辞典より)

日本において鳥獣は全て鳥獣保護法で保護・管理されています。

※正式名称は鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(長い!)

鳥獣とはそのまんま動物のうちの「鳥類」と「哺乳類」を指します。

では鳥獣保護法で保護・管理された動物、

例えばカモはどうやったらとれるのか?

「そんなの公園にいっぱいいるし、ガッと捕まえたら良いでしょう!」

というわけにはまいりません。ダメです。

なぜかというと、鳥獣保護法にはカモを保護する法律が定められているから。法律で禁じられているからガッとはできないわけですね。

じゃあどうするか?
鳥獣保護法にはその逆のカモのとりかたの法律も定められているのです。

つまり、鳥獣保護法に定められたやりかたに従うことで捕獲できるようになる。言ってしまうとそれだけだったり。

「従うって具体的にどうしたらいいの、よくわからん」

ハイ。そのとおり分かりづらいのです…。それでは次の項目でざっくり噛み砕いて説明していきましょう。

狩猟をするには?

狩猟をするには鳥獣保護法で定められた項目を把握し、守らなくれはいけません。

鳥獣保護法にしたがって鳥獣をとる行為、それが現代の日本における狩猟であり猟師の姿である、とすらいえます。

ではどんな決まりごとがあるのか?今回はもっとも大きいところ、以下の四つを紹介します。(他にも沢山の決まりがありますよ)

■鳥獣保護法で鳥獣をとるときの決まり(代表的な四つ)
1.とってよい鳥獣の種類
2.鳥獣をとってよい期間
3.鳥獣をとってよい場所
4.鳥獣をとる手段

1.とっていい鳥獣の種類

狩猟ではどんな生き物でもとって良いわけではありません。

鳥獣保護法においてとってもよい鳥獣は狩猟鳥獣と呼ばれ、かっちり決まっております。

アライグマは狩猟鳥獣の一種、とって減らすべし!

2019年現在における狩猟鳥獣は、

・カラスやカルガモなどの鳥類が29種
・イノシシやシカなどの獣類が20種

この合計49種類だけがとってもよい鳥獣になります。

したがって、49種類に入っていない鳥獣はとることができません。

例えば駅前によくいるドバト、この鳥は49種類に入っていません。ですからとれない。もしとってしまうと鳥獣保護法違反でおまわりさんにしょっぴかれます。

また外来種だからといって許される事もありません、例えば千葉県で繁殖しているキョン、これもダメです。(そのうち50種類目に入るかもしれませんが…)

さいきん雑に増えてきたからって天然記念物のカモシカをとるのも、もちろんダメ。

逆にいうと、よく食卓にあがるイノシシ・シカ・マガモ・カルガモなどは狩猟鳥獣に入ってるわけですね。

このように決められた狩猟鳥獣を守る必要があります。

2.鳥獣をとってよい期間

人間の安全のため、鳥獣の繁殖のため、様々な理由から狩猟をしていい期間が明確に定められており、

これを猟期と呼びます。

今年も猟期が待ち遠しいのです!

猟期は一般的には11月15日から翌年の2月15日までの3ヶ月の間、この間だけ鳥獣をとることができます。

一般的には…と表現しましたが、この期間は県や区域、対象の鳥獣の種類によって変わるのです。

身近な例でいいますと、東京はシカ(ニホンジカ)の狩猟に対し「青梅市、檜原村及び奥多摩町の区域内においては、翌年の2月末まで」と定めております。つまり該当地区ではニホンジカを2月16日~28日のあいだ余計にとる事ができるわけですね。

また極端な例ですが北海道のように猟期が10月1日から1月31日までと大きくずれるパターンもあります。

このように狩猟を行うためにはとる区域における猟期を守らなければなりません。猟期はそれぞれの県で広報されていますので一度確認してみましょう。

3.鳥獣をとってよい場所

狩猟はどこでもできるわけではありません。狩猟ができる場所はこれまたカッチリと決まっています。

都市部に住んでいる方で、狩猟を実際にやっているシーンを見たことがある方は少ないのではないでしょうか。

なぜ見かけないかと言いますと、都市部では狩猟ができない場所が多いため、なのですね。

その区域が書いた図は、鳥獣保護区等位置図、通称ハンターマップと呼ばれ、猟師はこれを見てどこならば狩猟ができるのかを判断します。

私のよく使う神奈川県ハンターマップ

ちなみに各県のホームページでも公開されており、誰でも見る事ができます。東京都はこちら、他県のかたも試しに自分が住んでいる区域がどう示されているのかチェックしてみると面白いですよ。

4.鳥獣をとる手段

さて多くの猟師志望の方の壁となるのがこのルール、とる手段も明確に決まっています。

狩猟においては、とる為に使って良い道具が明確に定められており、これを特定猟具と呼びます。

エアライフルも特定猟具のひとつ

・銃器(空気銃、散弾銃、ライフル)
・わな(くくりわな、はこわな、などなど)
・あみ(むそう網、つき網、なげ網、などなど)

使ってもよい道具はこれらのみ、

もしかすると読んでくださっている方の中には、狩猟といえばやっぱり弓矢!というイメージをの方もいらっしゃるのではないでしょうか?

ところが、現代の法律では弓矢を使用する狩猟は禁止されております。

弓矢で鳥獣をとってしまうと、たとえ猟期や狩猟鳥獣が正しくても罰せられます。狩猟を行うには、必ず上記のどれかの道具を使用する必要があるわけですね。(正確には各猟具ごとにとってもよい狩猟鳥獣が定められています)

余談ですが、正確には使ってもよい猟具だけではなく「禁止猟法」としてやってはいけない方法が定められております。代表的なものが先程の弓矢。「では、OKな猟具でもなく、NGな猟具でもないもの、例えば"素手で捕獲"とかはやっていいの?」という話があるのですが、ビミョウな話題であるため今回は割愛させて下さい。ちなみに役所に一度問い合わせた事があるのですが、その際は「法定猟具のみを使用してください」との解答でした。

アライグマをとるのに使った箱罠は代表的な猟具のひとつ

さて、では紹介した猟具を使ってさっそく狩猟をやりたいところなのですが、

皆さんご存知のとおり、銃器は誰でも自由に使えるではありません。同じく、わな・あみも明日からさっそく動物をとるために使えるものではないのです。

猟具を使用するには狩猟を行う都道府県ごとに登録が必要となりまして、登録は猟具(銃器、わな、あみ)ごとに行います。

例えば東京都で私が「今年の猟期は東京でワナを使ってアライグマをとるぞ!」と考えたとします。

そうすると私は東京都に「わな猟をやりたいです」と申請をだし、登録してもらわなければなりません。

これを狩猟者登録と呼びます。

そしてこの狩猟者登録、誰でも申請できるわけではありません。狩猟というのはお話したとおり、鳥獣保護法というヤヤコシイ決まりを守らなければならないわけで、当然に東京都は気軽にホイホイと誰の申請でも受理してくれるワケではないのですよね。

「私は鳥獣保護法を知ってます!守れます!」と伝えるための手段として必要なもの、それが狩猟免許です

シンプルにいってしまうと自動車免許の狩猟バージョン、

どうやれば狩猟免許をゲットできるかといいますと、これまたシンプルな話で、各都道府県で実施している狩猟免許試験を受験し、合格するだけ。

狩猟のため久しぶりに試験勉強をやったぜ!

試験に合格をすると狩猟免許が交付され、狩猟者登録の申請を行う事がでるようになります。

申請が通ればついに貴方もはれて猟師のひとり、ゴールイン!というわけですね。

ところが最後に落とし穴、所持するためには?

これで猟師になるために必要な手順をざっくり説明させていただきました。

しかし、ここまで出てきていない話題がひとつ。

「狩猟者登録をすると猟師になるのはわかったけども、実際の猟具は誰でも持てるの?例えば鉄砲とか。」

良い質問です。

実のところ罠・網に関しては所持に制限はありません。

極論をいうと、あなたが明日にでもAmazonで10万円のイノシシ用のでっかい箱罠を買っても合法だったりします。(ただし所持するだけで、使うためには前述の登録が必要になります)

実際に罠でイノシシをとるには、大変なわけですが!

ただし、銃器については別

狩猟免許に合格したから、狩猟者登録を行ったから、といって銃器を持てるようにはなりません。

銃器を所持するためには、鳥獣保護法とは別で、警察による制度において、銃砲所持許可を得る事が必要になります。

つまり、銃器に関しては、狩猟者登録をして、なおかつ鉄砲所持許可を得る、という二つのミッションをこなしてはじめて猟師になれる、という事になります。

他の二つよりもちょっぴり大変、目指す方はめげずにやっていきましょう!

最後に本の紹介。「これから始める人のための狩猟の教科書」孤独のジビエで有名な東雲輝之さんの著書。

狩猟を始めるにあたって必要な情報が(私の文章よりきちんと!)キレイなイラストや写真入りでまとまっています。最短ルートで猟師を目指す方にはゼヒ手にとっていただきたい一冊。おすすめ。


以上、
狩猟とはどういうものなのか?という話でした。

今回はここまで、

もしかすると「あれ?なんかへんだ、ダメと言われたことをやってる人を見たことがあるぞ~」と思った方がいるかもしれません。

実のところ、鳥獣をとるには狩猟とは別に「許可捕獲」というやりかたがあります。

例えば、

農地を守るために夏でもイノシシやシカをとる有害駆除、

特別天然記念物なカモシカをとる行政の頭数調整、

屋根裏に住み着いたハクビシンを駆除する害獣駆除屋さん、

などなど。

それらは一般的には原則不可能。県や市からの許可や依頼があってはじめてできる行為で、狩猟とはまた別のもの。このあたりの話はまた別の機会にさせて下さい。

さて、次回は実際にどうすれば猟師になれるのか?具体的な手順についてお話したいと思います。

つづきます!

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