アライグマ罠をIoTで自動化して楽したい

2022年3月1日とりかた・知識★狩猟, アライグマ, ハクビシン

#とって食べるドキュ 更新せんでん!
"アライグマの丸焼きBBQ とって食べる会2021冬"

前回の #とって食べる会 のレポートが動画になりました!目玉はアライグマの丸焼き!?

罠猟をやるものなら誰しも見る夢、それは

「罠が自動的に動いてくれたらなあ…。」

ということでしょう。

アライグマ捕獲用の箱罠

作動検知、自動エサやり、ライブカメラ、世の中に専用の製品はあるものの、お高く(数十万単位)、簡単には手が出させません。

でもそれ、今流行のIoTで何とか自作できない?

「できそうな気がする!」

ってことでチャレンジしてみたところ、

結果からいうとIoT化に成功。

一旦完成を見た1号(しかし彼には欠点が…)

罠の作動チェックを自動化し、私は罠の見回りから開放されました。やったね!

まぁ厳密には"エサやり"と"回収"は手動なんですが、それでも劇的に楽になりましたよ。

罠でとったアライグマ肉の料理、アライカツとアライ汁。

今回はそんな"アライグマ罠をIoT化して楽したい!"という挑戦と結果のレポートです

罠猟を自動化したい!

狩猟の手段のひとつ罠猟、

条件さえ整えば"最短時間・高確率"で獲物をゲットできる効率のよいやりかたです。

私が畑にしかけているアライグマ罠(左の三脚は撮影機材)

ただ、やるうえで大変なことが一つ…

それは見回り。

罠に獲物がかかっていないか?定期的にチェックをしなければいけないのです。

罠にかかったらアライグマ(美味しかったです)

その頻度は、

毎日。

…ないしは最低でも2~3日に1回はチェックする必要があります。

これが家の隣とかだったら良いんですが、私の場合はバイクで30分くらい走った場所です。

ちょーーーめんどうなんです。

でもその超ダルい見回りをしなくても良い方法があるとしたら…?

例えばIoTとかで。

IoTのイメージ(イラストACより)

IoTとは雑にいうと「何でもインターネットにつないで活用しようぜ!」ってこと、つまり罠をインターネットにつなじゃうってことですね。

やってみましたよ。

罠IOT化計画

私は元々アルバイトでイノシシの駆除をやっていたのですが、

現場には200基くらい罠があるんですが、そのうち数台に作動検知装置がついていました。獲物がかかると罠の名前と時間がメールで届くんですよね。

「あれいいなぁ!」と思ってたんですけど、話聞くとNTTかなんかのサービスで1台10万以上して、ランニングコストもすげーかかるんだそーです。

そりゃ無理!

でも動作はシンプルで、

・マグネットセンサーで検知
・NTTの回線(たぶん携帯電話と同じLTE回線)でデータを送信
・単3電池で稼働

という具合。

「これなら同じようなの作れるんじゃあないの?」

ということで簡単な設計図を書いてみました。

アライグマ罠にマグネットセンサーをつけて
→IOT機器で検知させて
→LTE回線で送付し
→インターネット経由でメールを送信
→私のタブレットにメールが届く

こんな感じで出来るんじゃないですかね?

IoT機器は何を使う?

まずは基盤となるIoT機器をどうするか、

以前に軽くこの話を友人に相談をしたら、いわゆるラズパイ的なやつで電波を送ることは比較的簡単にできるらしい。

ラズパイ、ドクターストーンで宇宙に飛ばしてましたね。あれもIOTのひとつの形


ただ「それをやるならコンセントから電源をとる必要がある」とのこと、

畑のど真ん中にコンセントはありません、ハイ終了。

一応、モバイルバッテリーで長時間稼働させることはできるが、それでも数時間が限界らしい。罠に使うなら最低でも一週間は持ってもらいたいところ。

この話を会社の同僚(F氏)に設計書を見せて話したとこ、

「マイコン使えばいけるんじゃ?あれは消費電力が少ないよ。」

マイコン!

炊飯器とか電子レンジを動かしてるアレ。

そういえば私の持ってるトレイルカメラとかもマイコンで動いてます。確かにマイコンは省電力なのかも。

ブッシュネルのトレイルカメラ。これは単3電池で1ヶ月以上稼働します

「でもマイコンで簡単にLTEの電波飛ばせるの?」という疑問もあり、聞いたり調べてみると。

あるじゃん、LTEを飛ばせるマイコンボード。

Wio LTEという製品で、Arduino(アルディーノ)という汎用的な基盤にLTEモジュールがくっついたもの。簡単にプログラムできて、センサーやら色々とりつけられるんだそう。

そしてそのF氏がマイコンのプログラムをやっていただけるとのこと。

これはデキちゃう奴なのではなかろうか?

さっそく作ってみました。できました。(形だけはね)

苦労した1号機 Wio LTE

機材は通販で揃えました。

内訳はこんな感じ、

・"Wio LTE"本体 \11,710
・LTEアンテナ ※本体同梱
・マグネットスイッチ(GROVE – 磁気スイッチ) \640

・SIMカード \2,700
・クラウドツール(IFFFT)※無料
・モバイルバッテリー(後述) ※手元のものを流用

“Wio LTE"の本体はSORACOMから購入、マグネットセンサーはスイッチサイエンスから購入しました。

SIMカードはAmazonで買い切りのプリペイドを購入。

半年で安価に利用できるプランがありました。たすかるー!

クラウドからメールを送付するためのツールはIFTTTを採用。

コレを組み合わせ、友人にマイコンのプログラムを書いていただき、

マイコンのプログラムはArudino IDEというソフトで書くそーです

なんとアッサリ、LTEメールの送信に成功!

ありがとうF氏。

その勢いでハウジングを作成(装置を入れるケースのことです)

ハウジングはタッパーで作りました。身近な防水アイテムといえばこれ

マグネットスイッチセンサーはダクトテープで蓋の裏に貼り付けました。

タッパー越しにマグネットを近づけ、センサーでオンオフを検知する事にも成功!

蓋の上側には接着剤で磁石を置く場所を作っています

そして罠をおいてある農地で実際に動作テスト、これにも成功!

動かないようコンクリにくくりつけて固定

続いて罠との結合試験、

箱罠の裏に置き、マグネットでつないでみました。

獲物がかかり扉が閉まる
→すると糸がひっぱられてマグネットが外れ
→磁力がオフになったことを検知し
→メールが飛ぶ

…という仕組み。これで罠の作動がわかるはず。

この動作テストにも成功!

順風満帆じゃあないですか?と喜んで実際に稼働させてみたのですが…

すぐにとある問題に直面したのです。

1号機の欠点、マイコン&バッテリー問題

それはバッテリー問題。

調べたところ"IoTをやるものは誰しもぶちあたる課題"なのだそう。

モバイルバッテリーと安全装置の話

マイコンは「電力の消費が少ないのがウリ」というのはその通りなのですが、どうやらそれがモバイルバッテリーと相性が悪いらしい。

というのも一般的なモバイルバッテリーは安全装置というものが備えられているそうで、それが「少ない電力の長時間流出」を検知すると電力の出力を切っちゃうんだそうです。

つまり罠をセットアップして数分たつと、モバイルバッテリーから電力が供給されなくなるわけです。なんてこった!

対策として安全装置がないバッテリーがあるんだそうで、

こちらIoT専用バッテリーこれだとマイコンの省電力でも動作するんだそうです。

これでうまくいくのか?(ダメでした)

バッテリーの容量問題を解決したい

安全装置のないバッテリーに交換し実地試験をしたのですが、またもや問題に直面…!

それは単純に

すぐに電池切れする。

 

ずっと通電しっぱなしというのはソコソコ電力を食うらしく、3,200mAhのバッテリーでは2日と電力が持たないみたいなのです。猟期の屋外が寒いせいもあるかもしれません。

F氏に協力してもらい、プログラムを最適化し電力の消費を抑える…なんてこともやったのですが、それでも数日と電力が持たずダメでした。

20,000mAhとかの大容量バッテリーが使えれば解決するのかもしれませんが、それだと先程の安全装置問題に直面するというジレンマ。

そこでネットの記事を読み漁ると電力制御ボードというものがあればイケル!という記事を発見、

・Wio Extension – RTC \1,320

電力のON/OFFを時間で制御できるボードらしく。これがあれば稼働時間がもっと長くなりそう、という事で購入。

毎日規定時間(朝5時とか)に起動させ、マグネットスイッチの状態を確認して、結果次第でメールを送るようなプログラムに書き換えればいけそう?

ただこの辺でショージキ、

開発に疲れてきちゃって…

「他にもっと簡単な方法はないものか?」と探していると、

もっと簡単そうな機材を見つけちゃったんですよ。

大正解 SORACOM LTE-M Button Plus、2号機爆誕

それは機材を購入していたSORACOMさんのホームページでたまたま発見した、

SORACOM LTE-M Button Plus“という製品。

オールインワンの機材で、LTEアンテナとSIMも内蔵していて、プログラムも不要。ボタンを押したらLTEで電波を飛ばし、SORACOMクラウドのプラットフォームに投げることができるらしい。

加えて、他のセンサーをつなげることで、ボタン以外の入力も可能。

都合良いことに、商品に磁気センサーセットがあるじゃあないですか!

コレ使えば単体でうまくいくんじゃ!?

欠点は、

・SORACOMのシステムとしか連携できない(これはIFFFTと連携して解決可能)
・SIMの料金プランが特殊(月110円+利用分と、かなり安いので無問題)

なことくらいでしょうか?あとは、

・Ardinoに比べたら汎用性が低い

ことかなあぁ、とはいえこの欠点は私の用途に限っては問題にならないでしょう。

しかもお値段も1万円以下ときた、安い。

IoT用途で売ってるんだし、電池の持ちもいいでしょきっと!!

てなわけで購入(チャリーン♪ \9,680)

さっそくセットアップ、

SORACOMさんの取説(SORACOM IoT レシピ:IoTでドアの開閉モニタリング)とネットで見つけた記事を参考にしつつ、IFTTTと連携。

あっさりマグネットセンサーを検知してLTEでメールを送信することに成功!

さすがはオールインワンのメーカー製、かんたん!

続けてハウジングを作成、

2号機、現地使用済みのもので汚れていてスミマセン

1号のノウハウを応用して作成、同様にマグネットスイッチがオフになると検知するタイプ。

2号機の中身

本体を収める場所だけ発泡スチロールを切って新たに作成しました。

マグネットスイッチの位置も同様、外側の磁石は百均の1kg向けで問題なく動作しました。

農地で試しにオンオフしてみたところLTEはちゃんと飛ぶっぽい(アンテナがなくてちょっと心配してたのですが、問題なし!)

では実地試験、

このときは糸を忘れてしまって、適当なベルトで罠とつなぎました

前回と同様に罠にセットし、しばらく稼働させてみます、

エサはバナナとキャラメルコーン

さあ電池はどれくらい持つか…?

現地をチェックするたびに機材をチェックしたところ、

一週間、問題ナシ!

二週間めも問題ナシ!

それどころか、猟期終わるまで一ヶ月以上ずっと電池ぎれナシ!!

その間、獲物がかかかるたびに、きちんと私にメールも飛んできました。

罠にかかったハクビシン、バナナ美味しかった?

完璧です。

SORACOM LTE-M Button Plus!!(名前長い!)

ぶじ罠の見回りが自動化され、めちゃめちゃラクになりました。

ピッタリな製品をありがとうございます!!

(あれ、1号は?)

まとめ

マイコンで罠の自動見回りを装置の開発にチャレンジ。結果としてバッテリーの壁にぶち当たり、めちゃめちゃ苦労しました。

…が、世の中には探せばぴったりな製品が売っていて、それを使えば簡単にできちゃったよ!というオチでした。

とはいえ、おかげで快適に罠を運用する事ができるようになりました。もう毎日早起きしなくていい、やったあ!

1号のその後

メリットの"高い拡張性"を活かす方向で検討中。カメラとか温度センサーをつけられるみたいなので、検知と同時にモニタリングも出来るマシンとして汎用的に構築してみるとか?

でもしばらく開発は良いかな~いやもうホントごちそうさまです…!!

アライグマ

【採取場所】11/15~2/15(猟期、東京の場合)
【採取時期】農地、林
アライグマ科アライグマ属。アメリカ原産の外来種でラスカルブームで大量に輸入された。別名気性がアライグマ、飼いきれなかったヒトが逃し、現在日本各地で野生化している。

参考にさせていただいた資料:SORACOM、engadget.com(バッテリー問題)、Seeed wiki(Ardino関係)、他各種ブログ様、わな猟の教科書
わな作動通知システムの製作事例(E メール・LINE 版)※九州農政局農村振興部農村環境課(IFTTTとSORACOM LTE-M Button Plusの連携)
スペシャルサンクス:同僚のF氏(ありがとう!)

宣伝コーナー

手軽なIoT機器、家の電化製品のスイッチを遠隔から操作できるようになりますよ。


IoTのわかりやすい入門書

罠の入門書、3章でスマートトラップについても触れられています

【おまけレシピ】罠のIoT化について

※IoT装置のセットアップ方法は本文を参照してください。