トチの実の凶悪なアクを二ヶ月かけて抜いてみた。手強かった

2023年2月16日木の実トチの実,季節【秋】


トチの実。

食べたことがない方も、名前だけは聞いたことがあるのではないでしょうか。

日本原産の木の実で、昔から食べられてきた伝統的な食材。

しかし強烈なアクを含むため、食べるためには長期間(二ヶ月!?)かけてアクぬきする工程が必要なのだとか。

トチ餅、長野県の山村で購入しました

さてそんなトチの実なのですが、一般に流通することは滅多にないため、

いったいどんな味がするんだ?

と、気になって眠れない夜を過ごしておりました。

これは実際にやってみるしかない!

と、"木になる"トチの実をとってきて、実際に二ヶ月にわたるアクぬき処理に挑戦。

今回はその流れと結果を報告させていただきます。全編にわたって時系列でお届け!

トチの実を拾いにいく

9月18日

狙いをつけていた公園にトチの実を拾いにいきます。

少し遅かったのか、狙っていた木はすでに取り尽くされていました。

いきなりピンチ!

ほんのり焦りはしましたが、

二つ目のポイントではまだ木に実がついていました。ホッ。

時折、

スコーン!

と音がします。ちょうどトチの実が落ちてきているのでしょう。

ありました!

これがトチの実。まだカラに包まれています。

当たったら痛いだろうなぁ…と上に気を配りつつ、

落ちている実を集めます。

集めた実は、靴で踏んづけて、

カラから実を取り出します。

ゴロッとした大きな実が入ってます。こんな感じ、

見た目は完全に銘菓くりまんじゅう、

しかし、いくら旨そうだからとはいえ、かじりついてはいけません。

この実にはもはや毒ともいえるほどの猛烈なアクが含まれています。

結局、ジップロック三袋分のトチの実を集めることに成功しました。

さっそく持ち帰って処理をはじめていきましょう!

トチの実を虫だしする

9月19日

拾ってきたトチの実は水に漬けておきます。

目的は実の中に潜り込んだ虫を追い出すため、

アクの強烈なトチの実でも食べちゃう虫がいるんだそうですよ。

9月22日

三日ほど漬けたものがコチラ。水を吸ってふくれたのか、ひび割れています。

ちなみに特に虫は浮いてきませんでした!

トチの実を干す

9月23日

虫出しを終えたトチの実は、日の当たる窓際で干します。

9月28日

干す工程の第一の目的は保存のため。

厚いカラと強烈なアクのおかげか、乾燥さえさせておければ長期保存できるのがトチの実のいいところ。

昔はこの状態のトチの実を非常食として、屋根裏に貯蓄したのだそうです(wikipedia調べ)

10月10日

一週間後、

カラカラになってきました。

干す第二の目的としては、実の繊維を崩すという狙いもあるのではないでしょうか。

そうすることでカラを剥きやすく、またアクも抜けやすくなりそうです。

11月9日

更に一ヶ月後、

シワシワになりました。

干す第三の目的として、残暑の残る9月~10月をやり過ごすという目的もあるのではないかと考えております。

この後の工程を暖かい時期にやってしまうと腐敗してしまいそうなのですよね。(腐敗失敗このあとすぐ!?)

トチの実をふやかして皮をむく

11月10日

いくぶんか寒くなってきました。そろそろ次の工程に移りましょう!

二ヶ月近い乾燥作業でカラカラに干からびたトチの実がコチラ。

栗まんじゅうの化石??

軽くて、重量は1/2~1/3ほどになっていそう。

カラのハリがなくなりビタッとくっついています。

これを熱湯につけます。

そうすることで吸水し元通りの大きさまで膨らむのだそう。

このまま半日ほどおきます。

11月10日

半日後、

お湯が白く濁っていました。

香りはほんのりクリっぽい感じで美味しそう♪

実と一緒に私の期待もふくらみます!

さてお次は皮剥き、

専門家はトチへしという専門の道具を使うのだそうですが、

そんなものはないので、金切り鋏で真っ二つに割ってむいていく作戦。

割ったトチの実の断面、クリよりドングリに近いか?

皮を手でペリペリと剥がしていきます。干したおかげかキレイに剥がれますね。

剥いたものはこんな感じ、

数個やったところで既にになってきました。

いやいや!

とったからにはやらねば…!

二時間後。

七割がた終わってきたのですが、仕事が終わってからはじめたので既に深夜…

このあたりで、皮の剥き過ぎにより手を負傷。

皮をひっぺがす作業が爪に負担をかけてしまうようです。

対策としてペンチを用意、

これで皮をひっぱると、まあまあいい感じに剥けます!

最初からこれでよかったのでは…

更に一時間後、

正午を回ったところでようやっと剥き終えました!1キロくらいでしょうか。

えらいぞ自分!!

トチの実を流水でアク抜きする

11月11日(深夜)

試しにこの状態で味見をしてみましょう。

ほんのひとカケラをひょいっと、

ぱくり。

う゛え゛ええええぇぇぇぇぇえぇ!!?

コーヒー豆に抹茶をまぶしたかのような猛烈な苦味。

加えて口の中がアワだちます。

これはだ!!

ぺっぺっ!!!

はい。

アク抜き前のトチの実は決して食べられません。

しっかり抜いていきましょう!

用意したのは水切りストッキング

扱いやすくするため、これで実を包んでいきます。

ぽんぽんぽん、っとね。

お風呂場に移動。

これに水を注ぎ、

ちょろちょろと水を出しつつ、ひとばん放置。

めっちゃ泡がでますね。

ちなみにこの泡はアクの成分であるサポニンのおかげ。界面活性作用があるのでお風呂がピカピカになるかも!?

11月11日(翌朝)

一晩放置したトチの実。

水は黄色く濁り、表面は泡だっています。

水を一度ぜんぶ捨てて、ネットをワシワシ洗います。

そのあとはちょろちょろ放置を継続。

11月12日

二日目。半日もたつと濁ってくるかんじ。

同じようによ~く洗って水を入れ替え、ちょろちょろ放置を続けます。

11月13日

三日目、

まだ泡がでてきます。

内部からジンワりと浸透してくる感じでしょうか?

 

11月14日

四日目、

アワはほとんどでなくなってきました。

11月15日(朝)

五日め、一日ほうっておくと水の色が変わっているので、まだアクは出続けているかんじ。

しかし変化がないのがもどかしいですね~

試しにこの時点で味見。

ぱくり。

口に入れてすぐはそれほど違和感なく、ナッツっぽい風味。

おっ、アクぬきできてる?

と思いきや、噛んでいると例の苦味と渋みがやってきます。あと泡!

ぺっぺっ!

家庭での流水アクぬきには限界があると考え、ちょっと早いですが次のステップに進むことにします!

トチの実を重曹でアク抜きする

11月15日(昼)

アク抜きの第二ステップは、アルカリによるアクぬき。

伝統的には木灰でやるようなのですが、食用の灰なんて中々用意できるものではありません。

というわけで、重曹で代用してみることにしました。

ぐぐってみると、木灰でやる場合のペーハー(酸性・アルカリ性度数)はだいたい10度ちょっとくらいのようです。

一応、重曹を限界まで溶かした水のペーハーをチェックしておいたほうがよいでしょう。

というわけで、何処の家庭にもあるリトマス試験紙を用意。

まずはテスト、

東京都の水道水は黄色のまま。

数値は7くらい、だいたい中性ですね~

お次はレモン汁、

赤のようなオレンジのような色に変化。

数値は3~4くらい?酸性であることがわかります。

で、本命の重曹水。

濃いグリーンに染まりました。9~10くらいでしょうか?

11には届かないものの、十分な値でしょう。(たぶん)

ではでは、確認がとれたところで温めた重曹水にトチの実をドボン。

このまま24時間おきます。

11月16日

翌日、濃い黄色に染まっていました。

これはトチの実中のグルテンがアルカリに反応して色が変わったもの、

身近なものだとラーメンとかと同じ、つまりアルカリ処理は効いているということでしょう。

ここで取り出し、よく洗い、

再びお風呂場に移動、

朝晩水を替えつつ、一週間ほどアクぬきを続けます。

11月21日

ここでトラブルが発生、

トチの実からこれまでにない匂いがします。

腐ったか!?

と思ったのですが、

腐敗臭というわけではなく、なんとなくハイターのような香り。

それでも違和感のある香りに不安がビンビン。

ひとまず冷蔵庫に移動!

すっかり油断していました。アクがぬけてくる保存性が落ちるのかもしれません。

流水をやめて、水換えで対応していたことも原因でしょう。

とはいえ変化があったのはアクが抜けてきた証拠、ポジティブにとらえて続けていきます!

11月23日

冷蔵庫に入れつつ朝晩水を替えること数日、

アルカリ処理からは一週間が経過しました。

そろそろ良いのでは?

ということで、三度の味見。

ぱくり。

もぐもぐ…

おっ、いける!!

ような気がしますね…?

まず泡立ちません。

大事。

でもって、以前のような苦味はほぼ消え去っています。

例のハイターの香りもありません。

後味に苦味がほんのり残るのですが、これは仕方のない事だと考えます。

売られているアク抜き済みトチの実も「単体だと苦味を感じます。混ぜて使って下さい。」と書いています。そういう食べ物なのでしょう。

なにより先に味見をしたものと比べると、間違いなく食べ物の味になっているのは確か。

ここでアク抜き完了とします。

いやあ長かった…!

トチの実を食べる

11月23日 トチ餅を作って食べる

アク抜きができたトチの実を食べてみます。

まずは定番のトチ餅から。

蒸したトチの実はつぶして白玉粉と練り、

団子状にし、きな粉をまぶしてみました。

お味はまあまあ、トチの実らしさがあふれる一品。

こちら詳細は前編にまとめておきましたのでどうぞよろしく。

トチの実を拾ってトチ餅を作って食べてみた。苦かった

11月30日 トチご飯を作る

残りのトチの実は冷凍し、いろいろな料理に活用してみたのですが、

うち一品がこちら、

トチご飯。

普通の水分量のご飯と一緒にトチの実を炊き込んだシンプルなもの。

炊きあがりはご飯が黄色く染まっており、とても美味しそう。

そのお味はと言いますと…

無味。

ご飯と合わさったことで、苦味はほぼ感じず、間違いなくアクぬきはうまくいってるのですが。

味も抜けきっておりトチの実の主張がないのです。

もちろん食感は残っていますから、塩をふれば普通のご飯と違った味覚を楽しめなくはないのですが、

正直なところカサ増し要員という感想。

もちろん決してまずくはありません。

しかし「トチご飯を楽しみにアク抜きをがんばるんだ♪」というほどではない、というのが正直なところ。

コメが不作のときにしかたなく食べるものという役割だったんだろうなあ…と遠い昔に思いをはせる味でした。

ごちそうさまでした。

まとめ

干している期間を含め、およそ二ヶ月をかけて、トチの実のアクぬきをしを食べてみました。

ご飯と合わせて違和感なく食べられましたので、ひとまずアク抜きは成功だと言えるのですが、最終的な風味や途中で感じた違和感のある香りなど、反省点が残ります。これは次回のチャレンジに活かしていきたいところ(やるの!?)

さて、まだまだアク抜きをした実が残っていますので、より美味しい食べ方を探してみますよ。続きます!

トチの実を粉にしてだご汁を作る。うめぇ!

トチの実(栃の実)

【採取場所】公園、山林
【採取時期】9月~10月
ムクロジ科トチノキ属。トチノキの木の実。実というが食用になるのはその種のぶぶん。古くから食用にされてきた。中世では飢饉に備えて屋根裏に貯蓄した家もあったのだとか。サバイバルむけの食材。

参考にさせていただいた資料:Wikipedia、栃山菜屋.com、とちもち本舗 大福城、クックパッド

使った道具はこれ!

力なハサミ、分解清掃できるのもエライ

クぬきには重曹

トマス試験紙があると知的好奇心が満たせますよ

トチの実は買えます!

【おまけ料理レシピ】トチの実のアクぬき手順 都内のマンションでもできるよバージョン

【材料】
トチの実 x食べたいだけ
重曹 x1キロ~2キロ
水 xたっぷり

【作り方】
1.
トチの実を拾ってくる。
落ちてきたトチの実に当たると痛いので注意。

2.
トチの実を洗い、水に三日浸ける。

3.
トチの実をネットにあけ、1ヶ月以上、寒くなるまで天日干しにする。

4.
湯を沸かし、沸騰直前で火を止め、トチの実を入れ、一晩おく。
ふやけたら皮を剥く。

5.
皮を剥き半分に割ったトチの実を水にさらし、ちょろちょろと水を出したまま放置する。
一日に一度、トチの実をゴシゴシと洗い、水を入れ替える。二週間続ける。

6.
たっぷりのぬるま湯を作り、重曹を限界まで溶かす。
2日間、トチの実を浸ける。
※鍋の材質によっては変質するため注意すること。長期間やりすぎても変質する。

7.
トチの実をよく洗い、再び水にさらし、ちょろちょろと水をだしたまま放置する。
一日に一度水を替える。腐敗しやすいため注意する。
一週間続け、かじってみて、なんとなく食べられるくらいになったら完成。