ナラタケモドキは可食キノコだが食べて後悔した件
雨上がりのある日、
東京の西のほうへキノコ狩りに行ってきました。
んで、よく会う地元のキノコ大先輩に、
「今どきのキノコは何がとれて~」
「今日はどれがよくて~来月はこれこれが~」
みたいな話をうかがったのですが・・
「最近はナラタケモドキをよく見る。今日は雨上がりじゃからでとるだろ。」
と、教えていただきました。
ナラタケモドキ。
食べたことないやつ!
食べてみたい!
そんなわけで今回はナラタケモドキをとって食べてみた話です。美味しかったんですが、食べた後にものすごく後悔してしまったんですよね…。
ナラタケモドキとの出会い
あれ?そういえばさっき散策したときに見かけたような…
というわけで戻って再チェック、
あっ!
いましたよ、
これがナラタケモドキじゃあないですか?
ナラタケモドキってどんなキノコ?
さっそく手持ちの図鑑とネットで同定タイム。
なになに…
ナラを中心とした広葉樹の木から生える寄生タイプのキノコ。キノコシーズンの初めの頃に発生する。
特徴は…
茶色っぽい傘で、中央が黒ずみ、傘の外周に条線が見える。
柄にはツバがなく、根本が濃い茶色で上にいくほど薄くなるグラデーション。
根本から密集して沢山生える事も特徴。
綺麗な状態は短時間で、すぐにドロっと汚くなってしまう。
【メモ】
持ち帰ったあとにツイッターでいただいた情報では
・傘の中央に黒いゴマ粒のような鱗片がつく
・柄がポキポキと音を立てて折れる
のもポイントだとのこと。
うん、全て特徴に合致しています。
これは自信をもってナラタケモドキであると言えるでしょう。
それでは採取っ!
ナラタケモドキ、ゲット!!
念の為…
キノコ大先輩に見てもらって、
「それがナラタケモドキであっとる。ナラの木に生えとったじゃろ?」
とお墨付きをいただきました。
これで安心して食べられるってもんです。
さっそく持ち帰って食べてみましょう!
このとき、後に"あんなこと"になるなんて思いもしませんでした…
ナラタケうどんを作る
こちらが持ち帰ってきたナラタケモドキ。
お試しで三房くらいとってきたのですが、一房が大きいため思ったより食べごたえありそう!
大量に食べると消化不良で食あたりを起こすんだそうで、
まずは一房…の半分くらいにしておきましょうか!(弱気
まず石づきを落として、
大先輩いわく、
「大きいものはマズい。食べるならちっちゃいのが良い。」
とのこと、
悩んだのですが、
「まっ、その味の違いを見るのもいいよね?」ということで気にせず大きいものも使っちゃう。
大きいものはそのまま、小さいものは半分に、
メニューは、
ナラタケ(モドキ)うどんでいっときましょう。
茹でたうどんに、ナラタケモドキをどーん!
うどんと一緒にグツグツ煮たところで、
麺つゆと合体!
キノコのダシがたっぷりでた茹で汁をそのまま使うのがポイント!
最後にネギをパラッと散らしたら、
ナラタケうどん、完成!
ナラタケモドキの味は?
イイ香り♪
早速いただいてみましょう!
ずずず…
うんうん。キノコっぽいダシが出てる感じ、いつものうどんより美味しい!
ナラタケモドキもいっときましょう、
まず大きいのから。
ジャキジャキ…
あっ、美味しくない!!
繊維質な食感で、噛みしめるとアクのような木のような風味。
先輩の言うことは本当でした…
じゃあ小さいのは?
つるん♪
あっ!
うまい。ぜんぜん違いますよ。
ぷるぷる食感で旨味が強い!
こんな違うのか~~~!
いやうまいですね、ナラタケうどん。
地域によっては愛されメニューだと聞いていたのですが、なんとなく頷けるというものです。
あっさり完食!
うまかったです。ごちそうさま~~
で、その後…!
食べてその後…思わぬ苦しみ!
余談ですが、
ナラタケモドキには似た猛毒キノコがおります。
その代表格がコレラタケ、
そしてヒメアジロガサ。
名前からして明らかにヤバそうなやつらですが、致命的な猛毒菌で、
その効果は同書によると…
中毒症状が二段階に分けて起こる。潜伏期間が長いのが特徴。
①食後6~24時間でコレラ様の症状(嘔吐、下痢、腹痛)が発生、しかしそれは1日くらいで回復する。
②その後、4~7日くらいしてから肝臓肥大・黄疸・胃腸出血などの内臓が破壊の症状が発生し死ぬ。
※"Gakken 日本の毒きのこ"より引用
ゾクッ…!
としますね、
ほぼほぼ確実な死なんですよ?
とはいえ、しっかり鑑定し、この二つと違うことを見比べて食べたのです。
問題ない…はず。
そう、問題ないはずなのですが、
かくして食べた後に
「本当に大丈夫だったのか?」
という不安がやってきたのです。
不安と生きる7日間
序
まず考えたのは
本当に大丈夫なの??
という安全性の再確認。
もし間違えて食べたとしても早めに気づいて病院にいけば多少はマシになるでしょうから、調べておくにこしたことはないという判断。
それで、
・めちゃめちゃヒメアジロガサの特徴について調べる
→コレラタケの特徴についても調べまくる
→そして、とったキノコと見比べて「違うな。」と自分に言い聞かせる
・混在していた可能性について調べる
→根っこからつながったひとまとまりを食べたから大丈夫と言い聞かせる
なんてことを気の済むまでやりました。
調べた限り、
・コレラタケとヒメアジロガサはスギなど針葉樹に出ると書いてある、今回は広葉樹
・コレラタケは晩秋のころ、今回は初秋、シーズンが違う
・コレラタケもヒメアジロガサもツバがある、食べたキノコにはツバがない
結論、問題ない…はず。
とはいえ、
・じゃあ、たまたま早くコレラタケがでてるなんてことはないのか?
・じゃあ、コレラタケ・ヒメアジロガサは本当に広葉樹には生えないのか?
・じゃあ、ヒメアジロガサのツバがはずれた個体が混じっていたら?
なんて考えてしまって
どこまでいってもはずとしか言えない私。
できることは…
「大丈夫。」
と自分に言い聞かせて気持ちを落ち着かせる事だけでした。
破
次に考えたのは、
万が一症状がでたらどうするか?
症状が出てくるとしたら、図鑑に書いてある"食後6~24時間"なのでしょう。
その万が一に備えて…
・毒で生じる症状をネットで調べる
→複数のサイトで比較確認
・救急車の呼び方を調べる
・近所の病院の緊急夜間外来を調べる
・呼べるタクシーを調べる
・病院で症状を伝えるシミュレートをする
・伝えられないくらい意識がもうろうとしていたらどうするか?もシミュレート
→財布に「キノコ食べた。死ぬかも。コレラタケ?ヒメアジロガサ?毒はアマトキシン」とメモを挟む
なんてことを一通り実行。
そして、それから24時間の間、
・体調を細かくセルフチェック
→ちょくちょく体温を測る
→トイレにいくたびに便の状態をチェック
→こまめに食欲や胃腸の具合もチェック
・同僚に念の為経緯を伝えておく
・そして不安から冷や汗をかく
・しまいには不安でお腹がいたいような気がしてくる…
なんて事をやっていました。
ちなみにもちろんセルフチェックの結果はずっと問題なし。
そして区切りの24時間が訪れ、一安心…!
といきたいところだったのですが、「自覚症状が出ない場合もあるのでは?」と最大一週間セルフチェックを続けてしまいました。
急
最後にやってきたのは
何で食べたんだっけ?
という自問自答、
・恐らく一人で見つけても食べることはなかった
→じゃあなぜ食べたのか?
→大先輩に見てもらう機会を得られたから?
→沢山とれるキノコで、有効活用したいと思ったから?
→その日は他に美味しいキノコがとれなかったから?
なんてことをずっと考えてしまいました。
きっと何とか"食べたワケ"を見つけ、少しでも自分を安心させたかったのでしょう。
また、今後のキノコに対する接し方を考えるという意図もあったのではなかろうか?
この自問自答はたっぷり一週間は続きました。
終
七日、そして十日間ほどが過ぎた時点で、毒の発症するであろう期間を全て通過。
その時点で財布に入れておいたメモを抜き、同僚に伝え。ひと息をつくことができました。
「「ふぅ…。」」
ここで言える事はただひとつ。
「ちょっとでも不安になるキノコは、食べるのやめよ…」
以上、
本当にごちそうさまでした。おなかいっぱいです!!
まとめ
ナラタケモドキは美味しく、かつ豊富に採取できる優秀な食菌。多くの方が普段から採取しているキノコ
…ではあるのですが、私は食べたあとに"万が一のミスの可能性"からどうしても不安を感じてしまい大いに苦しんでしまいました。
「毒はないが、精神的な不安が己の毒になってしまうこともある。」
そういえばキノコを最初に食べたときもそんな気持ちになっていたような?大事なことを思い出せたような気がします。
最後に、反省をまとめてシメ!
良かったこと
・キノコに関する知識がずっと増えた。
・キノコの恐ろしさを再認識できた。
・お酒を飲まず暴飲暴食をせず健康的に過ごせた。
悪かったこと
・多少でもリスクを犯してしまった。
・他人まで心配にさせてしまった。
・心身にひどくストレスがかかった。
・気が気でなく遊びやブログ更新に手がつかない日があった。
次回への反省
・ごく些細な可能性でも猛毒にあたるキノコは食べるべきではない。
→特に心配性な私は余計に食べるべきではない
・そういえば"遺言"を書かなかったな!書けばよかった。
・次にナラタケモドキを食べるのはもっと経験をつけてから。
→少なくとも毒のあるコレラタケとヒメアジロガサをきちんと同定してからにする。
ナラタケモドキ
【採取場所】広葉樹林
【採取時期】晩夏~初秋、雨上がりがよい
キシメジ科。ナラタケと似ているがツバがない事で区別できる。豊富に採取できる優秀な食菌で、地域によってはナラタケと同様に食用にする。消化不良を起こすことがあるため、よく加熱し食べすぎないこと。特徴は本文中に記載。似た有毒キノコがあるため要注意。
※野生のキノコを食べる際は、よく観察し十分に鑑定する事を心がけて下さい。
参考にさせていただいた資料:Wikipedia、Gakken 日本の毒きのこ、キノコによる食中毒(東京福祉保健局)、きのこ見極め図鑑
宣伝コーナー
【おまけ料理レシピ】ナラタケ(モドキ)うどん
【材料】
ナラタケモドキ x一房
めんつゆ x適量(濃縮3倍以上のものがおすすめ)
うどん xひとたま
ネギ x1/3本
【作り方】
1.
ナラタケモドキはよく鑑定して採取する。
有識者の意見を伺うべき。
2.
とってきたナラタケモドキをさっと水で洗い、木くずを落とす。
石づきを外してバラしたら、大きいものはよけ、中~小な個体だけを食用にする。
ネギは小口切りにしておく。
3.
うどんを湯で、沸騰したらナラタケモドキを加える。
再沸騰させ、よく火を通す。
4.
茹で汁・うどん・ナラタケモドキを器に注ぎ、めんつゆで好みの味をつける。
最後にパラッとネギをふって完成。
ディスカッション
コメント一覧
キノコを採る過程、味のレポート、毒かもしれないと思った後の考察、反省まで素晴らしい記事だと思います。(あたかもwebサイトの偉い人みたいに言いました。通りすがりの素人です)
ひとつ提言、採って帰っても、必ずしも食べなくても良い。という選択肢を残しておく。というのはどうでしょう?
採る楽しみは残しつつ、深く考察する猶予を残して、安心して食べることができる気がします。
タイトルを見てナラタケモドキに当たったという話かと思いました。ナラタケモドキを食べてもなんでもない人もいますが、軽い消化器症状を呈する人も結構います。私も食べて美味しかったのですが、翌日腹痛、腹部の膨満感、ムカつきなどがありました。それ以来食べないことにしています。(毒)としている図鑑もありますよね。
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