オヤマボクチの火口を食べさせてもらった話

2023年9月20日野草・山菜オヤマボクチ,季節【年中】


オヤマボクチという植物がおります。

オヤマボクチの花
オヤマボクチの花。蜘蛛の巣がはってるかのような毛むくじゃらっぷり(wikipediaより引用)

毛むくじゃらな見た目で、山菜としても食べられるヤツ。

図鑑に乗っていて、餅につきこんで草餅にしたり、根っこをヤマゴボウとして漬物で食したりするのだそーです。

オヤマボクチの葉

しかしこれが高山植物で、低地である関東平野には生えていませんでした。

いつか出会ってみたいなぁ…と思っていたのですが、たまたま長野で出会い、その場で食べる機会がありました。それも火口をね。

オヤマボクチってどんな植物?

こちらがオヤマボクチ、てっぺんについたポンポンような花が印象的。

オヤマボクチ
背景がグリーンでわかりづくてすみません…

こう見えて1メートルほどの高さに育っています。けっこうでかい。

花。

ちょっと終わりかけでわかりづらいのですいが、つくりはアザミの花に似ています。

オヤマボクチの花

アザミはこちら、そんなに似てない…か?

アザミの花

こちらが葉。

縦長のハート型で、手のひらよりでっかい!大きい!

オヤマボクチの葉

極めて印象的なのが葉の裏、

真っ白なんですよ。

病気か?なんてちょっとビックリしちゃいますが、違うくて、

オヤマボクチの葉

これは葉の繊維。葉の裏に細かな毛が生えているのです。身近なところだとヨモギとか同じ。

昔はこの毛を火口(ホクチ、火をつけけやすくするための種火)として使ったのだそう。デカイから沢山とれたのでしょう。

だからオヤマボクチ。納得のネーミング。

でもってこのオヤマボクチは食用にもなります。葉をモチに練り込んで凍み餅という保存性の高い草餅に加工したり、


※凍み餅。いわゆるフリーズドライ草餅。独特の香りとずっしりした食感。

根をヤマゴボウとして漬物にしたり、


※食味はほぼゴボウ。いつか自分でもほって作ってみたい…

いろいろ利用できる里山にはなくてならない有用な植物、それがオヤマボクチなのですね。

オヤマボクチの火口を食べさせてもらった

そんなオヤマボクチ、ラッキーなことに地元の方に食べさせていただく機会を得ました。

食べることができたのは長野は奥信濃の蕎麦屋の“まろうど"さん

蕎麦屋さん

とある山菜採りツアーの昼食で寄りました。

天ぷらや香物も抜群に美味しかったのですが…

蕎麦屋の天ぷら

それより感動したのがこちらのおそば。

そば粉100%らしいのですが、異様にツルツルと食感がよいのです。

ぼくち蕎麦

「ってか、ソバってこんな食感だっけ???」

…と思ってると、山菜ツアーのガイドさんから説明がありました。

こちらのソバにはオヤマボクチの繊維をねりこんでいるとのこと。

まさかの邂逅!「おぉ、あのオヤマボクチが!?ソバに!?」

オヤマボクチの繊維

こちらがそのオヤマボクチとその繊維、あの葉っぱの裏の繊維を集めたものだそう。

綿みたいな食感で軽い。火口として使われたのがコレ。確かにこれならあっという間に火がつきそう。

オヤマボクチの繊維

こちらが乾燥したオヤマボクチの。もこもこ。

これから先程の繊維を取り出すわけですね。その手間はもすぬごくて、葉を軽トラいっぱいにあつめても繊維の塊はほんの1キロ位しかとれないそうです。貴重っ!

オヤマボクチの繊維

この繊維をちょっぴり混ぜ込んだのが先程のお蕎麦なのだそう。

蕎麦の生地を見せていただいたのですが…

断面から毛のようなものがでてるのがわかりますでしょうか。

オヤマボクチの繊維

この繊維のおかげでで薄く細いソバ粉麺ができ、あのようなつるりとした食感になるようです。

いや面白い…

「なんでソバに火口を入れたんだ?」

って素朴なツッコミもありますが、あの食味のすばらしさには感服せざるを得ません。火口はうまいぞ!

また新しいことを学んだ一日でした。学びもご飯もごちそうさまです!

余談

平地で繊維質な葉…といえばハハコグサが思い当たります。

以前にモチにねりこむためペーストにしたのですが、明らかに繊維感がありました。

できたモチもいつもよりプルプルだったんですよね。

コレを使えば、東京のあたりでも似たような食感の麺ができるかも…?

要研究。こんどやってみましょう。

以上、余談でした。

まとめ

火口として使ったり、食べ物として利用したり、何かと利用の幅が広いオヤマボクチ。食べたいなぁ…でも平地(関東平野)には無いんだよなぁ~~と思っていたら、たまたま訪れた長野は奥信濃の蕎麦屋で食べることができました。

それはソバのツナギとする図鑑に乗ってない利用方法で"ぼくち蕎麦"というらしい。食べてみるとソバの食感が段違いにツルツル。火口に使い方もあるんですねえ。面白い。こっちには生えていないのですが、一度どこかで採取して、葉も根もなんなら花も(アーティチョーク的に)まるっと食べてみたいもんです。

オヤマボクチ(雄山火口)

【採取場所】高山
【採取時期】春
キク科ヤマボクチ属。長い根をもつ多年草。古くは、葉の裏の繊維をホクチ(火口)として着火剤に使っていた。福島などではヨモギのようにモチに練り込んで凍み餅を作る。根もヤマゴボウとして食用にされる。

参考にさせていただいた資料:Wikipedia、ヤマケイポケットガイド 山菜・木の実
スペシャルサンクス:宿と蕎麦処 まろうど

宣伝コーナー

山でバッグに入れている図鑑。写真が大きくてわかりやすい

【おまけ料理レシピ】富倉そば

オヤマボクチの繊維を練り込むソバは富倉ソバと呼ばれ、幻のソバの二つ名もある貴重なもの。レシピは門外不出なのだとか。残念!

食べたい方は長野にGO。