ウシガエルのとり方、思ったより苦労させられてしまった話

2022年3月29日川・池ウシガエル,季節【夏】


夏になると田んぼからヴォーヴォーと聞こえてくる鳴き声、

その主はウシガエル

「食用になるカエルでけっこうデカく食べがいがある」ということで、とって食べてみたくて捕獲に挑戦してみました。

これがまたカエルなんて簡単にとれるだろ~と思っていたのですが、想像以上に苦労させられてしまったのです…。

ウシガエルとは?

アメリカ大陸原産の大型のカエル。食用ガエルとも呼ばれ。1918年をはじめに日本に食用として導入されましたが、日本の食文化になじむことはありませんでした。

しかし輸出用の缶詰の材料として価値が見いだされ、大正から昭和にかけて各地で養殖(養蛙)。手間がかからず育てられるとして農家の副業にと流行しおおいに生産されました。最盛期には主要な輸出商品として脚光を浴びたほどだそうです。

ウシガエル@写真ACより

そんなウシガエルですが、国内で飼育されるのと合わせて、養殖場から逃げ出したりまた害虫駆除の目的で屋外への放逐などが行われ(ある資料によると国の主動で産業と害虫駆除を兼ねて放流したのだそうです)、結果として全国各地の池・川において野生個体が流出し繁殖。日本全国に定着することとなりました。(参考資料:ウシガエルの輸入年および全国分布に関する考察)

さて、時は流れ現代。定着したウシガエルはそこらじゅうに生息しておりますが、変わらず日本では食用とみなされてはいません。レストランのメニューに乗っていたとしても、どちらかというとゲテモノジャンルの扱い。通販などで輸入の冷凍ものは入手できますが、気軽に店頭で購入する事はほとんどできません。

しかし東南アジアなどにおいてはこちらも変わらず人気のある食材。レストランで堂々とメニューにならぶほか、食料品店では食肉が一般的に売られており気軽に食べる事ができます。

また美食で有名なフランスで高級食材として親しまれているというのは有名な話。

そこらにワサワサいるものの、食文化の違いから食べられることの少ないウシガエル。どんな味がするのでしょう?実際にとって食べて確かめてやろうではないですか。

ウシガエルを取りに行く

先述の通り、ウシガエルは全国各地に分布しています。もちろん東京にもたくさん。

流れの緩やかな河川や池で、なおかつ水辺に草がたくさんでカエルの隠れ家に困らない場所がいい感じ。流れに関しては恐らく幼体であるオタマジャクシが生育できる条件が必要なのでしょう。

というわけで夏真っ盛りのカエル日和。そんな環境のとある河川に取りにいってきました。

以前に友人からウシガエルがいるよと教えてもらった場所。実はイカニモいそうだなと以前にひとりで来たことがあるのですが、そのときは見つける事ができませんでした…今回はいかに。

時間は夜、ウシガエルは夜行性で水草や水辺の茂みの中に隠れ潜んでいます。暗くなってくると次第に活動をはじめまして、茂みからでてきてエサをとったり水辺でモーモーと鳴き始めるのです。

ではさっそくざぶざぶと浸水。水は膝くらいの深さ。護岸はうっそうと草がしげっていかにもカエルの住処、というかんじ。

ウェーダーを履いて浅瀬に立ち入り、ヘッドライトで探します。コケてずぶぬれになるのは勘弁なのでゆっくりと慎重に…慎重に……探します。

水辺を探索していると…

ぬぼーっとヘッドライトに反射する怪しいヒカリ!

ウシガエルです!さっそく見つけました。

捕まえるべく網を手に近づいていきます。

網の射程まで近づいても逃げる様子はありません。

これはいける…ッ!

てぇぃ!!

…と網を伸ばしてみたのですが、ウシガエルは網が触れる直前でひらりと身を翻し水中にドボン

逃げられてしまいました。

何度か探してはチャレンジしてみたのですが全敗。かぶせるように振れば網に入ることはあるのですが、カエルがいる場所は茂みの上や水辺であることが多く、下に潜って逃げられてしまいます。

大きい磯網でも試したのですが、潜られて逃げられてしまいました

また、ウシガエルは見た目に反して警戒心が高くてセンシティブな生き物のよう、個体によっては音をたてたり明かりで照らすだけで茂みや水中に逃げてしまいます。

とはいえ個体差があるようで、ズ太い個体はライトを当てても近づいても逃げません。しかし間合いのようなものがあるのか、網を差し込むと急にあっさり逃げ出してしまうことがほとんどで、なかなか手強い生き物です。

日を改めてとり方を検討してみることに。

釣りでリベンジ!

網でだめだったので捕獲方法を再検討。失敗要因はカエルの動きを完全に封じることができないこと。

東南アジアではマジックハンドのような専用の「カエルつかみ」が売っていてそれで捕獲をするそうです。確かに掴んでしまえば潜ることもジャンプする事もできない。しかし残念ながら日本にはこれが売っていません。

長いマジックハンドで代用できるか?とも思いましたが未チャレンジ、思ったよりも高価なのです@Amazon

そんなこんなで悩んでいると、友人から釣りでとれたよ!との情報が。

ウシガエルは動くものを何でも口に入れようとするため、ルアーなどの疑似餌を動かし食いつかせる…というやり方でやってみた事もあるのですが失敗していました。

第一に草むらにいるカエルにルアーを投げ込み動かすのが困難。加えて障害物の多い場所に住んでいるため、ルアーが草や藻にひっかかかってしまい、まともな釣りにならず断念。

疑似餌、ブラックバス釣りとかで使います

ところが友人いわく、投げない。長い竿でぶら下げるだけでOKとのこと。

※長い磯竿、3.6mの安いやつを愛用してます

なるほど!!

確かにぶら下げるだけなら高価なルアーに草が絡んで回収不可能になる悪夢は発生しづらそう。

やってみる価値アリ!

というわけで再びウシガエルの潜む川に挑んできました。
リベンジマッチ、やってやろうではないですか。

今度は竿をかついで水面を探索。

前回と同じ場所でウシガエルを発見!

ゆっくり…ゆっくり…近づきまして、

間合いに入ったらするすると竿を伸ばし、目の前にルアーをぶら下げてやります。

ここまで逃げない…

続いてゆっくりと疑似餌をおろし、地面の上を跳ねるようにぴょんぴょん動かしてやります

ほーら餌だぞー餌だーぞー。とやってると…

不意に…パクッ。

食った!

同時に竿をあげ、しっかり針を口にかけると同時にカエルの自由を奪います。

あとはカエルを手繰り寄せて…

持ち上げたウシガエルをフライングキャッチ!

やりました!

ウシガエル・ゲットだぜ!!!

いやー、苦労しただけにとびきり嬉しい。

手に持ってしまうともう暴れません。え?なんぞ、何がおこってん。というキョトンとした目、かわいい

大きいカエルだとは聞いていましたが、手に持ってみると思っていたよりデカい。

普段見慣れているアマガエルと比べるとどころかゴジラくらいのサイズなのでは?

大きいだけあって後ろ足もご立派。じゅるり…これは食べがいがありそうです…!

さっそくシメたら、持ち帰って調理していきましょう。

ウシガエルの下処理について

ウシガエルは特定外来種に指定されているため、生きたままの運搬ができません。

現地で首のあたりをカットし、シメるのと血抜きを合わせてやって持ち帰ってきました。

さて、ウシガエルを解体していくのですがこれがすっごくかんたんなんです。

まずはハサミで腹をきって内蔵を取り出します。

続いて、切断面から皮をむいていきます。

革製品になるほど丈夫な皮をしていますので、力任せにやってしまってOK。

手も足も靴下を脱がすようにするりんとむけてしまいます。

脱がすととたんに食材っぽいビジュアルになりました。

主に食用にするのはジャンプするために筋肉がたっぷりついた後ろ足、

続いて前足、遊泳のための筋肉がほどよくついています。

基本的に使うのはこの二箇所のみ、とはいえ他も可食部は多くないものの食べられれるので、スープの具なんかにしちゃうとよいかんじ。

ウシガエルを料理する

今回はカラ揚げでいってみましょう。

にんにく醤油で漬け込みまして、

片栗粉をまんべんなくまぶしたら、

いい感じの温度の油にドボン。

じゅわーっと揚げていきます。

前足、中央が後ろ足です。手前はオタマジャクシでこれもうまかった。詳細はまた別の記事で書かせてください。

こんがりと揚がりました♪

ものはカエルですが、揚げてしまうと見た目はほとんどフライドチキンと変わりません。これなら抵抗なく食べられそうです。

ウシガエル初捕獲記念でお酒もあけちゃう。

それではさっそく頂いてみましょう。

いただきま~~~す!

カリッ…

むぐむぐ…臭みはありませんね。
(けっこう沼っぽいところでとったのに)

味は…おや?

あっさりして魚っぽい。

事前に調べたところウシガエルは鶏肉っぽい味わいだと聞いておりました。

いざ食べてみると、食感は手羽先っぽいのですが味そのものはに近い。個人的には太刀魚に似ているかな?もちろん牛っぽくはありません。

この件に関して、某ジビエの巨匠のお言葉なのですが、生育環境で味が大きく変わるのではないかということ。養殖のウシガエルは運動量が少なく栄養価の高い食事をしますが、野生の個体は運動量が多く食事も限られます。この違いにより味に差が出てくるのだろうと。

確かに前に焼き鳥屋で食べたウシガエルの焼き鳥(日本語って難しいですね)はもっと鶏肉に近い食感と味わいでした。生育環境でこれほどに味が違うとは…。

ウシガエルの約束された勝利の美味しさVサイン

鶏肉ライクの養殖ものは勿論うまいですし、今回の野生個体もうまい。

あとは個体に合わせた調理方法の工夫次第なのでしょう。あっさりした個体をこってりとした味付けの揚げ物にしたのは結果として正解。漬けダレと油がなじんでたいへんうまかったです。

様々な生き物をとって食べて、ゆくゆくはそれぞれに最適な調理方法を見出してゆく。果てしなく遠い「とって食べる世界の姿」をウシガエルに見させていただきました。精進します。ごちそうさまでした。

まとめ

野生のウシガエルをとるのは苦労させられましたが、なんとか釣りでとることができました。

ウシガエルは東京を含め日本各地にたくさんいます。今後とも効率的にとるやり方を確立し、積極的にとっていきたいところ。うまいですしね。

ウシガエル

【採取時期】4月~9月
【採取場所】緩やかな流れの水場
無尾目アカガエル科アメリカアカガエル属(アカガエル属)。体長11cm~18cmほどの大型のカエル。動物食で口に入るものであれば何でも食べ昆虫~鳥のヒナまでさまざま。冬季は土の中で冬眠。春~秋に活動する。5~9月に産卵し生まれるオタマジャクシは15cmにも達し、越冬したうえで翌年に成体に変態する。食用に供される大きさになるまで数年かかる。

【おまけ料理レシピ】フライドフロッグ

【材料】
ウシガエル x1匹
片栗粉 x適量
油 x適量

A
ニンニク(チューブorすりおろし) x大さじ2
しょうゆ(あれば九州醤油) x大さじ4

【作り方】
1.
ウシガエルは内蔵をだして皮を剥き、後ろ足と前足取り出しておく。

2.
Aをよく混ぜ、1の後ろ足と前足を15分ほど漬ける。

3.
2のカエルにまんべんなく片栗粉をまぶし、180度の油でカラッと揚げる。

4.
2~3分ほどでさっと揚げて油をきり熱いうちにいただく。